不安な時、腹が立つ時、落ち込んでいる時——そうした感情の反応とは別に、外的な苦難や内的な苦痛に直面してもなお、中心を保てる部分が、私たちの内側にはあります。セルフとは、この中心にある状態を指す言葉です。特別な人だけが持っているものではなく、誰の中にも、すでに備わっているものです。
定義
心理学の文脈で「セルフ」は、内的家族システム(IFS)というアプローチを提唱したリチャード・シュワルツが使った言葉です。シュワルツは、セルフの状態にある時、人は穏やかで、思いやりがあり、好奇心を持ち、物事を明晰に見ることができ、自信や創造性や勇気を感じ、他者や自分自身とのつながりを感じられると述べています。これは特別な訓練を積んだ人だけが到達できる境地ではなく、誰もが本来持っている状態だとされています。
シンカランドでは、私たちの内側には、それぞれの状況で反応する、いくつもの部分——シンカランドでは「パーツ」と呼んでいます——があると捉えています。腹が立つのも、不安になるのも、慎重になるのも、すべてこのパーツたちの働きです。パーツたちはそれぞれ、あなたを守るための大切な役割を担っています。セルフは、このパーツたちとは違う場所にあります。パーツの反応に飲み込まれている時ではなく、そのパーツの声に穏やかに耳を傾けられている時、その耳を傾けている側こそが、セルフです。
サイコシンセシスの創始者ロベルト・アサジオリは、セルフを「身体、感じること、心の変化に揺らぐことなく、常に意識があり、選択することができる存在」と表現しました。学術的には、こうしたセルフの概念はロジャーズの実現傾向とは別の文脈で語られてきた考え方ですが、その区別を踏まえた上で、シンカランドでは、このセルフの状態こそが、あなたの中で伸びようとする力が最も自然に働ける場所だと捉える立場を取ります。パーツたちの声を否定せず、かといって飲み込まれもせず、その声に穏やかに耳を傾けられる時、あなたはすでにセルフの状態にいます。
よくある誤解
セルフとは、感情を一切持たない冷静な状態のことだ
セルフを、感情に動じない、無感情な状態だと誤解されることがあります。しかし、セルフは感情がない状態ではありません。不安や怒りといったパーツの声を否定せず、それでいてその声に飲み込まれずにいられる、穏やかで思いやりのある状態です。感情がなくなるのではなく、感情との距離の取り方が変わります。
セルフは、努力して新しく身につける能力のことだ
セルフを、訓練を積んで新しく獲得する特殊な能力だと考える人がいます。しかし、セルフはゼロから新しく作り上げるものではなく、パーツたちの反応に覆われて見えにくくなっているだけで、もともと誰の中にも備わっているものです。育てるというより、覆いを取り除いて出会い直す、という関わり方に近いです。
セルフになれば、パーツの声は消えてなくなる
セルフの状態になることを、パーツの声が完全に聞こえなくなることだと誤解されることがあります。しかし、パーツはセルフになった後もあなたの中に存在し続けます。変わるのは、パーツの声に飲み込まれるのではなく、セルフの側から穏やかにその声を聞けるようになる、という関係の変化です。
FAQ
セルフとはどういう意味ですか?
外的な苦難や内的な苦痛に直面してもなお、穏やかさ・思いやり・好奇心・明晰さを保てる、あなたの中心にある状態のことです。心理学のIFSというアプローチで使われている言葉です。
セルフと自分軸はどう違いますか?
自分軸は、自分の内側の感覚を基準にして、日々の判断や行動を選べる状態を指す言葉です。セルフは、その判断や行動の土台にある、穏やかで明晰な中心そのものを指す言葉です。セルフが土台で、自分軸はそこから生まれる日々の判断の基準だと考えると分かりやすいです。
セルフとパーツはどう違いますか?
パーツは、それぞれの状況で反応する内側のいくつもの部分で、不安や怒りといった感情もパーツの働きです。セルフは、そのパーツたちの声に、穏やかに耳を傾けられる中心の状態です。パーツが個々の声だとすれば、セルフはその声を聞いている側です。
セルフの状態には、いつでもなれるのですか?
常にその状態に浸っていられるとは限りません。強い感情が動いている時ほど、パーツの反応にセルフが覆われやすくなります。ただ、その覆いに気づき、少しずつ距離を取っていくことで、セルフの状態に近づいていくことはできます。
セルフになるために、何か特別な訓練が必要ですか?
特別な資格や才能は必要ありません。パーツの声を否定せず、かといって飲み込まれもせず、そのまま見つめる練習を重ねることで、少しずつセルフの状態に近づいていきます。
関連する言葉
セルフがどんな状態かは、説明を読むより、実際に自分のパーツの声に耳を傾けてみるほうが早いことがあります。オリジンコードは、その耳の傾け方を丁寧にガイドする場として設計されています。
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